イノベータ、起業家、大学、および零細企業などのマイクロエンティティ向けのEPO料金の軽減について

04/04/2024

EPOでは2024年4月1日より、イノベータ、起業家、大学、および零細企業などのマイクロエンティティによる欧州特許出願について、手数料を軽減する施策を導入しています。欧州特許庁(EPO)によれば、「この新しい制度は、欧州特許制度をより利用しやすくすることにより、小規模で経験の浅い欧州の自然人または法人の成長および発展を奨励することを目的とする」とされています。

料金を30%減額

料金の軽減額は総額で関連手数料の30%となり、EPOの出願料、調査料、審査料、指定料、登録料、ならびに、欧州出願係属中に支払う毎年の更新手数料に適用されます。この料金の軽減は、統一特許や登録後に国内特許庁に支払う更新手数料には適用されません。

この料金の軽減は、欧州特許庁が国際段階での国際調査機関である場合に、国際出願について支払う調査料にも適用されますが、この場合は、後にその国際出願がEPOにおいて広域段階に入ることが必要です。国際調査料の軽減は遡及的であり、支払うべき審査料のさらなる軽減として計算されます。

軽減額

2024年4月1日以降、EPOに支払う料金は以下のようになります。

EPO出願料(35ページまで)135ユーロ
EPO調査料1520ユーロ
EPO審査料1915ユーロ
EPO指定料685ユーロ
3年目の更新手数料690ユーロ
4年目の更新手数料845ユーロ
5年目の更新手数料1000ユーロ
登録およびプリント料1080ユーロ

上の表に示す料金のみの場合、例えば係属中の欧州特許出願について、30%の軽減額は、2,300ユーロを超えることになります。5年目より後の更新手数料も支払う必要がありますが、簡潔にするため上の表では省略しています。

要件

この料金の軽減措置は、零細企業、自然人、非営利団体、大学、または公的研究機関などの、マイクロエンティティである出願人に利用可能です。零細企業とは、従業員が10名より少なく、かつ年間売上高および/または年間貸借対照表合計が200万ユーロを超えない企業として定義されています。

しかしながら、出願人が過去5年間に5件以上の欧州出願を行っていた場合には、料金の軽減を受けることができません。欧州特許庁を指定したPCT出願は、この評価において考慮されず、また本制度による料金の軽減を受ける対象になりません。

料金の軽減を受けるためには、出願人は適格性の申立を行う必要があります。これには、新たな出願の出願書類の提出時にチェックマークをつけること(願書(EPO様式1001)または広域段階移行(EPO様式1200)のいずれか)、またはEPO様式1011による別の申立書を提出することが含まれます。共同出願人がいる場合は、それぞれの出願人が料金軽減を受ける要件を満たしている必要があります。

出願の係属中に何らかの状況の変化があった場合は、直ちにEPOに知らせる必要があります。適格性を失った場合は、その後の料金の支払いは、通常の軽減なしの金額で行う必要があります。それまでに受けた軽減分を出願人が支払う必要はありません。

罰則

EPOは、料金の軽減を申請した出願人について無作為の調査を行い、適格性が疑われる場合には、出願人に対し申立の根拠となる適切な証拠を提供するよう求める旨表明しています。

もし申立が不適切に行われた場合、または、EPOにより証拠が求められた場合に、出願人が適格性をEPOに認めさせることができなかった場合は、それまでに支払った料金が不十分であるとみなされ、出願が取り下げられたものとみなされることになります。

出願のみなし取り下げを修正するため、出願人は、欧州特許条約(EPC)121条、EPC規則135に基づく手続の続行、EPC122条、EPC規則136に基づく権利の回復の請求の提出、および、EPC106条に基づく審判請求書の提出など、通常の法的救済を求めることができます。もちろん、こうした救済手段が必要となる場合には、出願人には大きな追加費用がかかることになります。詳細はEPOのウェブサイト およびEPOの官報でご確認ください。